PMS/PMDD について
PMSは、PMDDの軽いものと考えて間違いが無いのですが、重要な相違点は感情症状にあります。
PMDDでは感情症状は必須で、次の4つがあります。
1.気分の不安定性 (突然悲しくなる、涙もろくなる、拒絶に敏感になる)
2.易怒性 (著しいいらだたしさ、怒り、対人摩擦)
3.不快気分 (著しい抑うつ、絶望感、自己批判的思考)
4.不安 (著しい不安、緊張、高ぶっている感覚、いらだっている感覚)
これらが、月経前期に繰り返し出現し、月経開始前後に回復します。
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PMS/PMDD の架空の症例をお示しします。
病態理解にお役立てください。
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架空の症例Kさん(PMDD)
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29歳の Kさんは岐阜県の出身です。夫の転勤で東京に来ました。
生理の前に感情が不安定になることが多く、夫との喧嘩も増えてきたため、ネット検索をして自分はPMSであると確信しました。
近隣の産婦人科を受診し、漢方薬と抗不安薬アルプラゾラムを処方されましたが、症状が十分改善しないために精神科クリニックを受診しました。
Kさんは精神科医師に、ここ1週間の自分の気持ちを次のように言います。
「人生の意味が分からなくなります」
「別に死んでもいい、それでも何も変わりはしない」
「このままだと、子どもを傷つけてしまいそうです」
「自分は気が狂いそうです、きっともう狂っています」
「世の中の全部に怒りが沸きます」
「強い怒りが夫に向かい、大声で夫をどなってしまいます」
「でも、すぐに自分が悪いと思い、自分は本当に駄目な人間だと思います」
「そう思うと、涙が止まらなくなります」
「自分は何の価値も無い人間だと思います」
「焦燥感が強く、物事に集中できません」
「眠れません」
「体中が痛いです」
彼女は6年前に1人の女の子を出産していて、産後3か月頃にうつ病を経験している。今回の症状はその時とは違っている。その時は、ただ憂うつで悲しく、体を動かす気力もありませんでした。
彼女の症状はかなり前からありましたが、ここ何か月かで非常に悪化しました。
彼女はイライラしていて、世の中と夫と子どもに怒りをぶつけています。
診察の中で、彼女の口からは「離婚」をほのめかす言葉がたびたび出てきました。
また、希死念慮も表明されました。
彼女はPMSと自己診断していて、症状の日記をつけていました。
それを見ると、生理の開始から数日以内に、症状は突然消失していました。
医師は彼女に「症状日誌」を渡して、しばらくつけるように言い、SSRIを処方します。
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SSRIは連続投与で処方され、投与の2日目には症状はかなり改善しました。
そして、月経開始とともに、症状は速やかに消失しました。
その後、Kさんの症状は徐々に安定化し、夫との関係も修復されていきました。